1.当事者の主張
- 原告(商標権者)の主張
原告は,本件商標の指定商品である「米」の袋に本件商標を表示したラベルを貼付して顧客に納品し,米を販売してきたのであり,そのような利用も商標法50条にいう「使用」に該当するというべきである。 - 被告(不使用取消審判請求人)の主張
原告主張のラベルの貼付によっては,同ラベルの下には,株式会社Aの登録商標が看取されるので,1つの商品である「米」の包装に,指定商品を「米」とする異なる2つの商標が並列的に表示されている状態となっているから,商品の出所が原告(B)であるのか,株式会社Aであるのか定かでなく,そのような利用は法50条にいう「使用」に該当しない。
2.裁判所の判断
<原告による本件商標の使用の有無>
- 原告は,本件米を株式会社Aから購入し,これを顧客に販売していたものであり,本件米は,株式会社Aから仕入れたものであっても,これをいわば「転売」していた原告の「商品」であるということもできるところ,本件袋は本件米の「包装」であって,本件袋に「忠臣蔵」の文字,すなわち,本件商標を表示した本件ラベルを貼付する行為は,本件米の包装に「標章」を付する行為に当たるということができる。
- この点に関し,被告は,原告が本件袋へ本件ラベルを貼付することにより,1つの商品である「本件米」の包装に,いずれも指定商品を「米」とする異なる2つの商標が並列的に表示される状態となっているから,商品の出所が原告(B)であるのか,株式会社Aであるのか定かではなく,このような場合には,法2条3項1号ないし3号に規定された「行為」に該当しないと主張するが,本件袋に本件ラベルが貼付されることによって,1つの商品の包装に2つの商標が表示される結果となっていることは被告が指摘するとおりであるとしても,株式会社Aが販売した本件米の流通過程において,第三者が何らかの価値を付加するなどして再販売する場合に,当該再販業者がその再販売する本件米に第三者の商標を付して再販業者としての出所を明らかにし,その商標に化体した信用を本件米に与えることができるのは当然ともいうべきものであって,本件米の出所を混同させるとか,誤認させるとかいった批判は当てはまらないというべきである。
- 上記ア及びイによると,本件袋に本件ラベルを貼付して本件米を販売した原告の行為は,法2条3項1・2号に例示された商標の使用に該当する行為であるから,原告は,本件審判請求の登録前3年以内に,本件商標を本件審判請求に係る指定商品「米」に使用したものと認めることができる。
< 結論>
以上の次第であるから,原告が本件商標を使用していた事実は認められるので,その事実を認めることができないとして原告の商標登録を取り消した本件審決は誤りであって,取り消されるべきものである。
2009年11月
エスエス国際特許事務所
エスエス国際特許事務所