本件は上記のような場合に、原告(仮処分決定では債務者)が、被告(仮処分決定では債権者、特許権者)の仮処分決定に基づいて権利行使したのに伴って発生した損害に対して損害賠償を求めたケースである。
2.裁判所の判断
イ)保全命令が保全異議またはその上訴において取り消され、あるいは本案訴訟において原告敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情のない限り債権者において過失があったものと推定するのが相当である。(最高裁昭和43年(オ)第260号、同年12月24日第三小法廷判決)
ロ)仮処分命令についても、後に特許権を無効とする旨の判決が確定した場合においては、他の特段の事情のない限り、債権者において過失があったものと推定するのが相当である。
ハ)被告は、本件特許の出願前に先行技術を調査することにより、引例の存在を知り得たものであり、本件発明が特許を受けられないものであると判断することができたはずであり、無効事由の存在を認識することが可能であったというべきである。
被告には、本件仮処分決定を取得し、原告らに対し権利行使をした点において、過失があったものというべきである。
ニ)被告が原告の取引先に警告書を送付したことによって信用毀損が生じ、販売数量の減少が生じたと認定し、被告に対して1100万円の支払いを命じた。
2003年2月
エスエス国際特許事務所
エスエス国際特許事務所